スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Fateネタバレ感想(12) -セイバールート その10-

お盆の少し前に長期出張から戻りました。
自宅PCからの更新ができるようになって、ようやく人心地ついたところです。

さて、こちらに戻ったのを契機にこれまでの内容を見直したのですが、やはり「論点が多すぎる」、「1つのトピックが長すぎる」きらいがあります。今回と次回でセイバールートをまとめ終えてから、その後は3ルートの構造解釈(いわゆる謎解き)に入りたいと思います。

前回までの流れ
 セカイ系について (1) (2)
 Fateネタバレ感想
  序論 (0) (1) (2)
  セイバールート (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11)

前回は、英雄譚のモチーフと「行動の一貫性と信用・責任」という美点を、そしてメタフィクションという表現法から「キャラ視点での葛藤=作家視点におけるキャラ造型の揺れ」に触れました。

今回は、「魔力」とは何か、セイバーに「魔力」を供給していたのは誰か、について考えることで、「魔力の枯渇」という問題の枠組みを追うことにします。


Fateではいたる所に魔力・魔術に関する説明がありますが、まず基本となるのはアーチャーの言葉です。

   これは魂食い。結界内の人間の体を溶かして、滲み出る魂を強引に集める血の要塞に他ならない。

  「……ご推察の通りだ。我々は基本的に霊体だと言っただろう。
   故に食事は第二(たましい)、ないし第三要素(せいしん)となる。
   君たちが肉を栄養とするように、サーヴァントは精神と魂を栄養とする」
           (プロローグ 三日目『当日』)



これに加え、メタフィクションの二重性から、魔力の流れに関して

 Fate世界内での「マスター → サーヴァント」
 プレイヤー世界内での「プレイヤー → (主に主人公)キャラ」

という類推ができるわけです。
ここから、「プレイヤーからキャラに向けられる精神」、例えば「セイバー萌え」とか「ギル様最高」とか、単純・複雑、好き嫌いを問わずフィクションをきっかけに生まれた気持ち、全てが魔力だと言えるのです。

またフィクション以外でも、英雄と魔力とを見ることは出来ます。
現代では現実の人間を英雄視することは一般的に忌避されているものの、
辛うじてスポーツ界などに見ることが出来ます。
先ごろのW杯や五輪の時期になると、日頃はスポーツに見向きしないマスコミが
こぞって「選手のキャラを立てる」報道をして視聴者を煽り、
「国民の期待」という正体不明の圧力で、選手を育てたり潰したりもしますね。


さて、このような「魔力」のイメージを踏まえて、「セイバーに魔力を供給していたのは誰か」に移ります。

伝説時代、アーサー王を支えていたのはイングランドの民衆であり、その戦場は日の当たる場所、名誉を賭ける場所でした。セイバーに限らず英雄は、「民衆からの期待=大源(マナ)」を自分の力に変える魔術回路を持っています。

しかし時代と空間を越えた現代、セイバーに魔力を補充してくれるはずのイングランドの民衆はいません。戦いは、人目を避けて、日の当たらない夜に行われます。
聖杯戦争では代わりに、魔術師=マスターが魔力を供給するはずであり、第四回の切嗣をはじめ、他ルートでは凛も桜もセイバーに魔力を供給しています。魔術回路があるにも関わらず、士郎には魔力を供給できない、その理由は何なのか。

ここでもまた「二人の英雄」という問題にぶつかっています。
すぐ上で書いたとおり、民衆の魔力を1人で引き受け、大きな力に変えるのが英雄です。魔力を他人に与えるのは、民衆の役割であって英雄の役割ではありません。

自ら英雄にならねば、と思う人は、誰かに英雄になってほしい、とは決して期待しません。使命を引き受けるものは、その使命を他人に押し付けない。英雄性は、ストイシズムを根拠にしています。
「両雄並び立たず」は英雄をめぐる原理からの理論的な帰結で、簡単には動かしがたいものです。


このように、二人が英雄である限り、セイバーに魔力は供給されない、という構造が「魔力枯渇」だったわけです。

十日目、エクスカリバーを使う過程で、セイバーは躊躇を振り切りました。
暗黙のうちに「イングランドの民衆の救済」よりも「目の前の士郎の救済」を選んだ、とも言えます。

十二日目。凛は、一時凌ぎの目くらましにしかならないと知りつつ、二人に「恋愛」というフレームを与えることで、魔力枯渇を回避しようとします。

十四日目。士郎は、素直にこれに従い、そしてセイバーに英雄をやめろと詰め寄りました。これは明快に、「聖杯戦争の終わり=民衆の救済」よりも「セイバーの救済」を優先しています。

これらのやましさがあるために二人は、ギルガメッシュに打ちのめされますが(→(6))、そのやましさに救われたものもあるのです。



前回とりあげた、セイバーが別れを選んだ理由について、ふたたび取り上げます。

セイバーは「王の誓い」を守る、と口にして士郎から去りますが、
それは「過去の改竄の否定」や「誇りに殉じる」だけではありません。

最終的にセイバーは、聖杯を求めたことを逃避・弱さと断じますが、
その逃避のおかげで士郎は、
セイバーと出会い、聖杯戦争に生き残り、
自分が楽しめることをすこし身につけ、10年前の陰から解き放たれて、
その後の人生へと踏み出していくのですから。

セイバーは、「士郎にとってまぶしいセイバーの姿」をも守ったのだと思います。
なぜなら、セイバーは自分よりも他人を守りたいsaverだったのですから。



次回は、エロゲにおけるシナリオと愛とエロについて、
セイバールートを材料に簡単にまとめる予定です。

comment

Secret

プロフィール

牡牛

  • Author:牡牛
  • 物語る技術(コンセプト、シナリオ、構造、演出、表現ほか)について、分析・提案するブログ。
    主な関心領域
     エロゲ(分析・感想)
     TRPG(プレイング技術の提案)
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。